職人便り
竹笹堂の木版職人が技法や歴史のご紹介と共に、作品を制作する想いや、ふだんのでき事をお話します。
和紙摺師・森愛鐘
摺師はいろんな種類の和紙に木版画を摺りますが、和紙それぞれの個性に合わせて摺り方を調整しています。ある和紙はとても摺りやすく優秀なのですが、絵具が乾く前と後とで色が大きく変化するという個性を持っています。乾く前は濃い色が、乾くと驚くほど薄くなってしまうのです。その個性を踏まえて絵具を濃く作り、試し摺りでは念入りに乾かしてチェックする訳ですが、見本よりずいぶんと濃い色で摺り進めていると、ついつい不安になってきて少しだけ水を足してみたりします。そうして上手く摺れたと思って乾かと・・・あぁ、やっぱり薄いのです。またやられた・・・と思うのです。